大浦海岸にマッコウクジラ14頭  平成14年1月22日(火)
 22日の午前8時ごろ、鹿児島県大浦町の小湊海岸に14頭のクジラが打上げられているのを、散歩中の人に発見された。
クジラの種類はマッコウクジラで、体長11m〜16m、頭が角張った格好をして潮を前に吹上げ、その巨大な14頭が波打ち際100mにわたって折り重なるように横たわっている姿はとても悲惨で、辺りの海水はクジラの血で真っ赤に染まっていました。
数頭は死んでいるようでしたが、残る何頭かは潮を吹いて尾びれをバタバタして助けを求めているようでした。
今日はみぞれ混じりの風と雨が収まらず救出を断念、満潮時に自力脱出することを期待しましたが、ちょっと動いただけでした。
明日のしけが引くのを待って、クジラにロープを巻きつけ大型台船で引ぱって救出するそうです。
クジラ集団座礁の原因はまだわかっていません。
大浦町役場職員の方達は雨振りの寒い中、徹夜でマッコウクジラを見守ってくださいました。

左>重なったクジラ4頭  上>クジラ1頭分

     写真提供:(有)大平工務店
     <小学5年生の週報から>
「かわいそうに2頭も死んでいました。どうして迷って浅瀬に来てしまったんだろう。早くなんとかしてあげたい。 明日は残りの7頭が助かりますように。お祈りします。」
 「風がヒューヒュー言っている音が、クジラが泣いているみたいに聞こえた。」
(担任の先生から) 静かな町に突然のクジラ!!現場に着くまでは元気な姿を見る気分でいった子供達も、時間がたつにつれて「何とか助けて。」という思いに・・命の学習ができたかもしれません。

 昼前には、ヘリコプター3台とテレビ各局が取材に来ました。 大浦小・中学校と幼稚園の生徒など、多い時で200人以上の人がクジラの話を聞きつけ、「なんとか助からないか」と心配しました。
     1頭のクジラを無事救出  平成14年1月23日
 強風と高波の悪天候だったが、朝に生存が確認された2頭のうちの1頭が息をひきとったため、満潮の時刻に合わせて救出作戦がとられました。
クジラは、自身の体重で砂に埋まっているため身体が傷つかないように陸から大型クレーン車で持ち上げ、大型台船に乗せたクレーンからのびたロープを、ダイバーが直接クジラの尾びれに巻きつけ海上まで引っ張っていく難作業でした。
満潮の午後1時45分、クジラは時々潮を吹きながら、波打ち際を離れました。
そして午後5時ごろ、沖合い7km・水深45mの海域に放され、自力で泳ぎはじめ元気に潮を吹き上げたそうです。

このクジラの救出は、午後3時のテレビを見て救出を知り、社内で喜びました。
クジラが波打ち際から離れるときの様子がとても感動でした。
また、ダイバーの方が高波の中必死にクジラを持上げている姿や、役場の職員の方々がポンプでクジラに水を掛けてくださっている所がテレビに放映されました。
 残りの13頭の処分方法については、まだ結論が出ていないようで、今夜も加世田市の役場職員の方々の協力をもらい、24時間監視するそうです。
 「せめて1頭だけでも救出を」というのが皆んなの願いでしたので、決死の救出をしてくださった皆様には心より感謝いたします。
<中学1年生の週報から>
 今日のニュースでクジラが1頭助かったと聞きました。他のクジラも助かってほしかったです。だから他のクジラの分も助かった1頭には頑張って生きてもらいたいと思います。Fight
(担任の先生より)大浦町にクジラが打上げられた日の生活の記録はこの話題でもちきりでした。1頭だけ助けられたというニュースには「1頭だけでも助かってよかった」「残ったクジラがかわいそうだ」「傷だらけなのに助かっても・・」皆の反応も様々。助けられたシーンを見たとき、私は思わず胸がつまりました。クジラが吹き出した潮がなんだか涙を流しているように思えて。お父さん・お母さん・兄弟・恋人・仲間と別れて今ごろどんな思い出泳いでいるのかぁ。

クジラを砂から持ち上げている大型クレーン

クジラを引張っていく大型台船
 クジラ処理の写真はココからリンク   提供:(株)森組
1月24日 漂着したクジラは伝染病のおそれがあるため、焼却するか土に埋めるのか処分決まらず。
中潮のため作業台船が近づけず、作業の見送り。
1月25日 13頭すべて、県内外の水族館や博物館から骨格標本にしたいと申し入れがある。
骨格標本になるまでに、加世田市の小湊海岸に2〜3年埋設されることが決定。
午後からクレーン付作業台船が接近し1頭ずつ引寄せる作業が行われたが、13頭すべて引寄せるのに26日朝までかかる。
1月26日 早朝13頭すべてが、作業台船につながれて小湊漁港へ移された。
運搬中、1頭のロープが切れて越路浜から見える位置に流され、そのクジラを目撃した人は、「またクジラが漂着した。」と勘違いした。
1月27日 小湊漁港から埋設予定地の小湊海岸までの2kmの運搬作業は、1頭を埋設地に運ぶまでに10時間を費やした。 1頭目のクジラは比較的小さかったにもかかわらず、クレーンでクジラをつりあげたところ重量計が43トンを示し、運搬が困難であること判断、残りの12頭は骨格標本を断念した。
1月28日〜30日 大しけが続き作業進まず。
1月31日 12頭は3隻の作業台船に摘まれ、小湊漁港を出港。
しかし、野間池沖は波が高く埋葬を明日に延期、野間池漁港付近で停舶。
2月1日 早朝より笠沙町の野間岬沖約10kmに作業台船3隻で運び埋葬をはじめ、12頭すべての処理が終わったのは夕方だった。
船舶の妨げにならないように、クジラの胴体にコンクリートをつけなければならなかった。
前野輝行大浦町長は、クジラ1頭1頭に花と焼酎を捧げ、手を合わせお別れをしたそうです。
クジラにコンクリートを付けて葬る姿は悲しい思いがしたけれど、「漁礁になって良い環境になる。」という記事を見て少しホットしました。
クジラの救出・処理には6千万円の費用が費やされ、大浦町(人口約3000人)にとっての負担は大きく、今後の課題となりました。
しかし、2〜3年後どこかの博物館で骨格標本になった1頭が「大浦町に漂着したマッコウクジラ」と展示された前で、
「私は、この大浦町から来ました。」と自慢するでしょう。

「クジラ座礁に関する募金」開設のお知らせ
<窓口>花咲く町おおうら推進協議会
大浦町ホームページ内へリンクされます
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